第三夜

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「わたしって、いつもそんなに素っ気ない?」 「ご自分で思っている以上に素っ気ないですよ。女性って忘れてしまうくらいに」 「……っ」 そして今日はいつもよりも意地悪だ。 そんな聡乃を「可愛い」と言ったのは、どこの誰だったのか。 もちろんそんなこと口には出さない。 心のどこかで、可愛いなんて思っていないだろう、と思っている自分と、これはただの意地悪だ、と思っている自分がいる。 そう思うと、都琴のことは不思議と信頼している、らしい。 それは、仕事のやり方を見ているからなのか、会社での都琴に信頼を置いているからなのか。 「悪かったですね!」 ――と。 目くじらを立てて、背の高い都琴へと背筋を伸ばした時。 「遅くなってごめんねー」 「!!!」 真後ろから、低くも甘い、優しい声。 さっきとは違った意味で、背筋が伸びた。 目の前の都琴の表情が引きつったのは、もちろん気づかなかった。
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