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「わたしって、いつもそんなに素っ気ない?」
「ご自分で思っている以上に素っ気ないですよ。女性って忘れてしまうくらいに」
「……っ」
そして今日はいつもよりも意地悪だ。
そんな聡乃を「可愛い」と言ったのは、どこの誰だったのか。
もちろんそんなこと口には出さない。
心のどこかで、可愛いなんて思っていないだろう、と思っている自分と、これはただの意地悪だ、と思っている自分がいる。
そう思うと、都琴のことは不思議と信頼している、らしい。
それは、仕事のやり方を見ているからなのか、会社での都琴に信頼を置いているからなのか。
「悪かったですね!」
――と。
目くじらを立てて、背の高い都琴へと背筋を伸ばした時。
「遅くなってごめんねー」
「!!!」
真後ろから、低くも甘い、優しい声。
さっきとは違った意味で、背筋が伸びた。
目の前の都琴の表情が引きつったのは、もちろん気づかなかった。
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