乾いた心

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亮介さんとの出会いは、ありがちだが勤め先であるひばり銀行で、私と彼は上司と部下の関係だった。 二人は同じ銀行に勤めていたが、銀行には総合職と一般職とあって、亮介さんは、外回りの営業から融資の判断など、銀行が行う業務全般を担う総合職で、私は窓口の業務を担当する一般職と業務が違う。 それでも同じ銀行内の仲間なので、顔を合わせるし、会話もする。 ただ亮介さんは、ややいかつい顔つきをしているうえ、学生時代はラグビー部だったため色黒で、体つきががっちりしており、声も大きく、第一印象は“怖い”だった。 苦手意識を持っていた私だったが、話をしてみると、気さくで優しく全然違った。 周りからの信頼も厚く、上司や同期、部下にも慕われていた。 私もその中の一人だった。 平日は顔を合わせ、話をする度、私は彼に上司としてでなく、一人の男として惹かれていった。 上司と部下の壁を飛び越え付き合い始めたのは、入社して4ヶ月目のこと。 窓口の女性が一人授かり婚で、退職することになり8月の終わりの日、飲み会が開かれた。 亮介さんははじめ、私とは離れた場所にいたけれど、途中隣にやってきた。
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