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「とりあえず、服を降ろしてくるよ。どこに置いてある?」 「突き当りの部屋が物置になってる。箪笥に入れてしまってるさかい、この衣装ケースに服を入れて、持ってきて」 言われた部屋に行くと、大小様々な箪笥が部屋に置かれている。 部屋は空気がこもり、窓を開けると、昨日とは違う高さから見える湖が広がっている。 ゆらりゆらりと水面は穏やかに揺れ、光を受け止めていた。 まるで海だよな、と独り言をつぶやき、言われた通り、服を降ろしていく。 降ろしたものを祖母が選別している間に、また別の衣装ケースを持って二階へ上がっていく。 気温が上がってきたのか、同じ作業を繰り返していると、汗がじわりと浮かびあがってくる。 いつの間にか、一階は服であふれかえった。 「かなりの量だね」
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