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着物を分け終えると、一枚のくすんだ色のさらしが出てきた。 祖母は苦笑いしながら、まだあったんか、とあっけらかんとした声をあげる。 「それは?」 「これは、腹帯や」 「腹帯?」 「子どもを産む時に、大きくなったお腹を支えているために、巻いとったやつや」 「ふーん」 祖母はじっくりとさらし見て、今度は布を伸ばし広げている。 「これつけとった時は、もうここで頑張らんとあかんって言い聞かせとったな……」 悲し気な表情になったかと思うと、その古びたさらしを丁寧に折りなおした。 そのしぐさは何を思ってかが分からない。 祖母の引っ越しも片付けも、僕には理解しきれないものばかりだった。 「なんや、新、変な顔して。言いたいことでもあるんか?」
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