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「そら、こんなとこよりも都会の方がぎょうさんいい仕事あるし、もうこっちには帰ってこうへんって」 背中に嫌な汗を感じ、僕は言葉を返すことなく、そのままぼんやりと話を聞いている。 開け放たれてた縁側からはひんやりとした空気が舞い込んで、サッーと家の中を通り抜けていく。 9月のはじめ、まだ全国的に暑さは和らいではいない。 もう何か月もクーラー漬けの毎日だったせいか、クーラーなしでこの時期に過ごせていたことに、改めて気が付かされた。 この風は心地よくて、懐かしい。 「新が住んでる所はこんな田舎とは大違いやろな。ここは山ばかっりやし、おまけに昨日は近くで熊が出てきたで、小学校の坊らがはよ帰ってもたわ」 「うちんとこは、猿が来て、畑を荒らしてまったわ。いい加減、獣害対策をやらなあかんな」
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