8人が本棚に入れています
本棚に追加
「そら、こんなとこよりも都会の方がぎょうさんいい仕事あるし、もうこっちには帰ってこうへんって」
背中に嫌な汗を感じ、僕は言葉を返すことなく、そのままぼんやりと話を聞いている。
開け放たれてた縁側からはひんやりとした空気が舞い込んで、サッーと家の中を通り抜けていく。
9月のはじめ、まだ全国的に暑さは和らいではいない。
もう何か月もクーラー漬けの毎日だったせいか、クーラーなしでこの時期に過ごせていたことに、改めて気が付かされた。
この風は心地よくて、懐かしい。
「新が住んでる所はこんな田舎とは大違いやろな。ここは山ばかっりやし、おまけに昨日は近くで熊が出てきたで、小学校の坊らがはよ帰ってもたわ」
「うちんとこは、猿が来て、畑を荒らしてまったわ。いい加減、獣害対策をやらなあかんな」
最初のコメントを投稿しよう!