4/21
前へ
/21ページ
次へ
白髪交じりの男性陣の中に、顔を赤らめた父の姿もあった。 母は台所で来客たち用の食事の支度を終えて、一息ついている。 「ほら、新も二十歳過ぎたんやし、飲めるやろ?」 そう言われながら、盃を手渡される。 好んで酒を飲もうとは思わなかったが、叔父たちに誘われてしまっては、しかたがない。 注がれた酒を口に持っていこうとすると、少し離れたところから甲高い声が響いてきた。 「新、もうちょっとしたら、おばあちゃんを家まで送ってもらいたいで、お酒は飲まんといてな!」 母の声を聞き、叔父の顔はどこかしょんぼりしたように見えた。 「そか、運転するなら仕方ないわな」 「すみません」 小さく頭を下げ、周りを見渡すと、先ほどまでは黒一色で張りつめていた家の中も、上着が脱ぎ棄てられて、砕けた雰囲気になっている。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加