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白髪交じりの男性陣の中に、顔を赤らめた父の姿もあった。
母は台所で来客たち用の食事の支度を終えて、一息ついている。
「ほら、新も二十歳過ぎたんやし、飲めるやろ?」
そう言われながら、盃を手渡される。
好んで酒を飲もうとは思わなかったが、叔父たちに誘われてしまっては、しかたがない。
注がれた酒を口に持っていこうとすると、少し離れたところから甲高い声が響いてきた。
「新、もうちょっとしたら、おばあちゃんを家まで送ってもらいたいで、お酒は飲まんといてな!」
母の声を聞き、叔父の顔はどこかしょんぼりしたように見えた。
「そか、運転するなら仕方ないわな」
「すみません」
小さく頭を下げ、周りを見渡すと、先ほどまでは黒一色で張りつめていた家の中も、上着が脱ぎ棄てられて、砕けた雰囲気になっている。
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