7/21
前へ
/21ページ
次へ
「助かるわ。おおきに」 「今日は無理だけど、昼間なら大体空いてるし、都合のいい時を教えて」 「ほんなら、明日でもええか?」 米が入った袋でも運べばいいのかと安易に考えていたら、突然思いもしない言葉が助手席から飛び出してきた。 「あんな、ばあちゃん、引っ越しするんや」 「はっ?」 全く想像していなかった出来事に、間の抜けた声が出た。 「引っ越しってどこに!?」 八十歳手前の年寄りが、どこへ行くのか見当がつかない。 思わずハンドルを握る手に力が入る。 「県外にある高齢者用の住宅に引っ越すんや」 まるで旅行に行くかのように誇らしげに答えるのを聞いたが、なぜそんな堂々としていられるのかが理解できなかった。 「えっ!? だって、おばあちゃん、元気で一人暮らししてるだろ?」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加