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「おばあちゃん、なんだかこの家、昔と比べて随分すっきりしたね」
その言葉に祖母は、嬉しそうにうなづいている。
「一昨年、目の手術をしたんや。そしたら、家の中が汚れてたのが気になったさかい、いろんなもんを捨てたんやわ」
「ここに食器棚とかあったけど、それも?」
「ほやで。食器棚も飾り棚も随分とボロボロやったし、処分してまったわ」
こざっぱりとした部屋を見回しながら、窓を開けると、水面が再び広がる。
「ここの風景は昔から変わらないね……」
この家がなくなってしまうということが急に実感させられて、声をぽつりと漏らした。
「ほやな、ずっとここの景色はおんなじ。変わっていくのはいっつも人ばっかりや」
波立つ景色をじっと見つめていると、ふわりと不思議な気持ちになる。
繰り返される音や動きに癒されるのかもしれない。
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