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「俺のことは忘れて、幸せになって」
――お願い。忘れないで。
油断したらすぐに飛び出してこようとするそれを、違う言葉にすり替える。
気付かれないように、たったひとつの嘘を、たくさんの本当で折り重ねる。
何度も練習した笑顔は、ちゃんと本物に見えるだろうか。
ちゃんと真っ直ぐ、君に届くだろうか。
握り締めた手を、もっと強く握る。
震える唇に、力を入れる。
君がこれ以上、泣かないように。
君がちゃんと、幸せになってくれるように。
最後の最後に君を泣かせてしまった俺が、君に出来る最後のこと。
鈍感で泣き虫な君への、最初で最後のラブレター。
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