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「さっきね、久しぶりにプラネタリウム行ってきたの。いつも行ってたとこ。あの頃と全然変わってなかったよ」
理久がいなくなってから行くことのなかったプラネタリウムは、記憶そのままだった。
「だけどね、今度リニューアルするんだって。なんか淋しいよね。……あと、七号館もね、取り壊されてなくなってた。わたし達がいた時もほとんど使われてなかったもんね。……もう7年も経つんだもんね」
だけど、人も物も街も、時が経てばみんな変わっていく。ずっと同じでなんていられない。
わたしも、ずっと同じままじゃだめなんだ。
「……わたしね、引っ越ししようと思ってるの。このあと、不動産屋さん行くんだ。どんな家がいいかな。今住んでる家って親が決めたところだから、自分で選ぶの初めてなんだよね。
オシャレなとこもいいけど、やっぱ会社の近くかな。通勤楽になるし。今の家は結構時間かかるから。那月の会社はもっと遠いんだけどね。那月もさ、早く……あれ?」
ぽろりと涙が落ちた。
「……やだな、なんでだろ……。感情的になってるのかな」
拭っても拭っても涙は止まらなくて、嗚咽まで出てきそうになる。
「……理久、ごめん……」
膝の上の手を、ぎゅっと握る。
「わたし……。わたし、約束……守れなかった」
ずっと守るつもりだった。絶対守るつもりだった。
ここでそう誓ったのに。
「ひっ……、ごめ……」
――会いたい。
それなのに、そう誓ったこの場所でも、そればっかり考えている。
「……わたし……、っ」
顔を上げたその時、すぐ近くから砂利を踏む音がした。
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