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「……沙弓ちゃん」  わたしを見つめるその表情に、一瞬理久が(よぎ)った。  慌てて立ち上がり、頭を深く下げる。 「ご、……ご無沙汰してます」  花束を手にこちらを見ていたのは、理久のお母さんだった。  袖で涙を拭う。  息を吐いてから顔を上げた。理久のお母さんは、少し困ったように微笑んでいた。  その微笑みには、理久の面影があった。 「今日はお仕事はお休み?」 「あ……、はい」  理久のお母さんの視線が、花束に寄せられた。 「やっぱりそのお花、沙弓ちゃん達だったのね。毎年、来てくれてるわよね。ありがとう」 「いえ……」 「今日は一人で来てくれたの?」 「あ、はい。今日は……」  思わず言い淀んでしまうと、理久のお母さんは付け加えるように言った。
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