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 かける言葉が見つからなかった。  思わず触れてしまった二の腕はとても細くて、お葬式の日に見た、憔悴しきっていた二人の姿が蘇った。 「……わたし、ずっとあなたに……あなたと那月君に謝らなきゃいけないことがあったの……」 「そんな謝ることなんて……わたしの方が……」 「違うの」と理久のお母さんは緩くかぶりを振った。 「わたしは本当はもっと早く、あなた達に謝らなきゃいけなかった。それなのに……。だけど、どうしても出来なかった……」  理久のお母さんは一度小さく息を吐くと、ぽつり、ぽつりと話し出した。 「……わたし、あなた達をずっと恨んでいたの。あなた達がいたから、理久斗は無理して天体観測になんか行ったんだって。あの時あんな無茶をしなかったら……天体観測になんか行かなければ、少しでも、一日でも長く、生きてくれていたんじゃないか、って、わたし達の側にいてくれたんじゃないかって……だから、あなた達が憎くて仕方なかった。 本当はわかっていたのに。……天体観測はあの子から言い出したんだろうってことも、沙弓ちゃんが理久斗の病気のことを知らなかったことも、那月君も……那月君は理久斗のことを想って、理久斗の願いを叶えるためにしてくれたんだってことも。……あなた達が感じる必要のない負い目を感じていることも。わかっていたけど……それでも、どうしても許せなかった。 だから……だから、渡さなかった。
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