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あの子が亡くなる前に……理久斗に頼まれていた物があったの。自分が死んだら、あなた達に渡して欲しいって。
本当はお葬式の時に渡すつもりだった。でも……渡せなかった。その時に渡さなくても、他の日でも、前に見掛けた時に追いかけて渡さなきゃいけなかった。
何年経ってたとしても、自分から会いに行ってでも渡さなきゃいけなかったのに、それなのに……ごめんなさい……」
一段と大きな嗚咽が漏れた。
「もういいです。止めてください」そう言ったけど、理久のお母さんはかぶりを振るだけだった。
縋るように掴まれた胸元から、彼女の悲痛な思いが痛いほどに伝わってきていた。
「……見たの。わたし……見てしまったの、あなた達に渡すように言われてたもの。……わたしにはあの子が無理してるように見えて、あの子の本心じゃないんじゃないかって思って……ううん、違う。わたしが勝手にそう思っただけね。あの子はそんな子じゃなかったのに。
……わたしがあなた達が幸せになることが許せなかったの。あの子を置いて……あなた達に幸せになって欲しくなかった……」
理久のお母さんは、その後も「ごめんなさい」と何度も重ねた。
わたしは泣きながら、かぶりを振ることしかでしきなかった。
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