[佳乃編]そしてひとり

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…… 「で、結局デキてたんだ? その鍋島って女と」 「残念ながらそうみたい。 なんかもう、思い当たること多すぎて」 皆んなで残業しているなか、 相談に乗るからとか言って、 主任はしょっちゅう 鍋島さんと食事に行ってたし。 それでもウチには帰って来てたから、 疑わなかったんだけど。 外泊しなけりゃ浮気してないって、 そんなはず無いんだよね。 暗い私にいつものヒマワリ笑顔で 玲香は言うのだ。 「そんなアナタに朗報です。 ウチの兄、現在彼女いないんだって!! 残念ながら昔から見れば 太って禿げて臭そうなオッサンよ? でもまあ、ダイエットさせればいいし、 カツラか黒い粉で誤魔化せばいいし、 臭いは慣れれば平気だからッ」 そ、そんなことに?? そっかもう10年も会って無いんだ。 あの頃の和真は 容姿端麗を絵に描いたようで。 黙っていても周囲の人を魅了してしまう、 とても不思議な存在の男性だった。 「とっ、時というのは残酷なものなのね」 「あはは、ショック受けないでよ佳乃!」 項垂れて帰宅すると、 消したはずの照明があちこち点いていて。 「玲香、おかえり」 「あーっ、お兄ちゃん?!」 入浴後であることは間違いないその人が、 あの頃と変わらない…いやそれどころか、 数段パワーアップした姿で現れた。
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