鳴り響く汽笛の向こうに

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呆気にとられる俺の後ろには、同じように呆気にとられる綾が立っていた。 「いつのまに?」 「ていうかさー」  莉子が伸びをしながら言った。 「もー、あんたら、見ていてじれったくて!!」 「……そんなにバレバレだったのか?」  隠し通してきたつもりだったのに。 俺の問いには、4人とも顔を見合わせてニヤニヤするだけ。 「とにかく、」 博史が咳払いをして仕切る。 「もうベンチも空いたようだから、お前ら二人、ここで少し話をしていけ」 「や、でも、」 「二人っきりになれるなんて、もうあまりないぞ?」 いや、まあそれはそうかもしれないが。 「こんなもんも持ってきたから」 今度はあのでかい紙バッグから、ほんとに毛布が出てきた。しかも2枚も。 「気が済んだら、ライン送ってこいよ。俺ら観覧車にでも乗ってるから。みなとみらいで合流しようぜ!」  潤がそういって歩き出す。 「合流しなくてもいいけどね」  莉子がウフフと笑いながら付け加えた。 「とにかく、ちゃんと話せよ」  俺に毛布を押し付けて、博史も歩き出す。 「綾、何か手伝えることがあったら、言ってね」  美羽もそういうと皆の後を追った。
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