鳴り響く汽笛の向こうに

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「遅いな、あいつ」  博史(ひろし)が携帯を確認しながら呆れ顔でいう。 「今に始まったこっちゃないじゃーん」  莉子(りこ)は何をいまさらって感じの顔だ。 「お前、昨日あいつとデートしてたんだろ。その時、今日の時間確認しなかったのか」  俺は莉子の方を見て眉をひそめた。 「何よ、秀(しゅう)、それ私の仕事!?」  莉子が色をなす。 「莉子は悪くないよ。あいつ、遅刻の常習犯だもんね。あいつだけ5分くらい、早めに時間を言っとくべきだったよね」  綾(あや)がよしよしという顔で莉子を見た。 「ねえもう行ったほうがよくないかな……」  不安げに美羽(みう)がつぶやいた。 ここは横浜にあるJR根岸線の関内駅の南口。 時刻はもうすぐ夜の11時半になろうとしている。 なんで高校3年生の俺たちがこんな深夜に駅になんかにいるかというと、今日は大晦日だからだ。 俺たち6人は、ここから少し南の高台にある高校に3年間近く一緒に通った同級生だ。 1年の初めにサイエンスプロジェクトで一緒に組まされて以来なぜか息が合い、しょっちゅうつるんで遊んでいた。 誰かの家に集まることもあれば、夏休みには海に行ったり、週末にはボーリングに行ったり。 付き合いが途切れることなく続いたのは、6人が6人ともまるで似通ってない個性的な連中の集まりだったからかもしれない。
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