鳴り響く汽笛の向こうに

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「はぁー、やっと公園が見えてきたぜ」  潤が疲れたような声で言った。 「あと何分?」  美羽が心配そうに聞く。 「あと5分で零時」  俺が答えた。 「間に合ったー。アホ潤のおかげで、急ぎ足になったから、もー息が切れたよ」  唇を尖らせる莉子。 「しかしここもすごい人だな」  博史が感心したように言う。  なんだか重そうな大きな紙袋を持ってきているが、毛布でも持ってきたのかこいつは?  「ベンチはもうどこも空いてないね」  綾がまわりを見回しながら言った。 山下公園には海沿いに細長いベンチが、ずらっと海を向いて並んで置かれている。 「ありゃ基本、カップル用だから」 博史が応じた。 「じゃあ俺と美羽用か」  潤が美羽の肩を引き寄せる。 「勝手に言ってろ」 あきれ返る俺。 「さむ、」  綾がコートの前をかき合せた。 ツィードのあまり厚手でないコート。 こんな真冬の深夜に、これでは不十分だ。 俺のを貸してやりたいが、奴らの目もあるし、そうもいかず。
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