34人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「はぁー、やっと公園が見えてきたぜ」
潤が疲れたような声で言った。
「あと何分?」
美羽が心配そうに聞く。
「あと5分で零時」
俺が答えた。
「間に合ったー。アホ潤のおかげで、急ぎ足になったから、もー息が切れたよ」
唇を尖らせる莉子。
「しかしここもすごい人だな」
博史が感心したように言う。
なんだか重そうな大きな紙袋を持ってきているが、毛布でも持ってきたのかこいつは?
「ベンチはもうどこも空いてないね」
綾がまわりを見回しながら言った。
山下公園には海沿いに細長いベンチが、ずらっと海を向いて並んで置かれている。
「ありゃ基本、カップル用だから」
博史が応じた。
「じゃあ俺と美羽用か」
潤が美羽の肩を引き寄せる。
「勝手に言ってろ」
あきれ返る俺。
「さむ、」
綾がコートの前をかき合せた。
ツィードのあまり厚手でないコート。
こんな真冬の深夜に、これでは不十分だ。
俺のを貸してやりたいが、奴らの目もあるし、そうもいかず。
最初のコメントを投稿しよう!