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そしてまた季節は変わって、私は隣町に帰った。
私は今から一番近い未来に叶うであろう彼の夢を、一緒に追いかけると決めた。簡単な道のりではなかったけれど、私は諦めなかった。
そしてその時が来た。
私は、夢を叶えた。
だから今、私はこうして満開の桜の下に立っている。
あの子もここに来てくれると信じて。
そして私は、ようやく彼を見つけた。
「久しぶりだね」
振り返ったあの子は、出会ったあの日から見違えるほど変わっていた。
でもきっと、私もそうなんだろう。
「…キミは」
あの子は同じ制服を着た私を見て、囁いた。
「どうしてそんなに、僕の夢を叶えてくれるの?」
今更そんなことを聞くなんて野暮だ。あの子だって分かっているはずだった。
でも私は、自分の言葉で彼に伝えた。
「私はあなたのことが好きだから」
私は彼に駆け寄る。そして小さな声で付け加えた。
____だから、私は人魚にだって人間にだってなれるんだよ。
彼は笑った。その隣で、私も笑った。
私は人魚をやめて、今も人間としてあの子のそばに居る。
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