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僕は彼女がいなくなったあらましを説明した。
こんがり兄さんは、僕の話を聞いているんだか聞いていないんだか、
「ああそう」「ふーん」などと言いながら、焼きそばを焼く手を止めない。
「彼女はさぁ、きっと…」
彼女がなにに機嫌を損ねたのか、藁にでもすがるように、語りはじめた兄さんの話を前のめりで聞く。
「お腹減ってたんじゃないかな!」
こんがり兄さんは、焼きそばをこれ見よがしに焼きながら、こんがり焼けた肌の間に白い歯を光らせ言った。
なんのひねりもない、脈絡もないセールスの言葉に、僕の顔はこれ以上ないくらいの仏頂面になっていたのだろう。
慌てたこんがり兄さんが取り繕って言った。
「あっ、彼女ね!見た見た!」
急に飛び込んできた彼女の情報に僕はおどろく。
「ほんとですか?」
「ほんとほんと、紺の花柄の水着と白い帽子のコでしょ? あっちの岩場のほうに歩いてくの見たよ。」
こんがり兄さんがヘラで岩場の方を指して言った。
「ありがとうございます!」礼を言い、僕は駆け出す。
「彼女と仲直りしたら、焼きそば食べにきてよ!サービスするから!」
後ろでこんがり兄さんが叫ぶ声が遠くなっていった。
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