焼きそば700円

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 僕は彼女がいなくなったあらましを説明した。  こんがり兄さんは、僕の話を聞いているんだか聞いていないんだか、 「ああそう」「ふーん」などと言いながら、焼きそばを焼く手を止めない。 「彼女はさぁ、きっと…」  彼女がなにに機嫌を損ねたのか、藁にでもすがるように、語りはじめた兄さんの話を前のめりで聞く。 「お腹減ってたんじゃないかな!」  こんがり兄さんは、焼きそばをこれ見よがしに焼きながら、こんがり焼けた肌の間に白い歯を光らせ言った。  なんのひねりもない、脈絡もないセールスの言葉に、僕の顔はこれ以上ないくらいの仏頂面になっていたのだろう。  慌てたこんがり兄さんが取り繕って言った。 「あっ、彼女ね!見た見た!」  急に飛び込んできた彼女の情報に僕はおどろく。 「ほんとですか?」 「ほんとほんと、紺の花柄の水着と白い帽子のコでしょ? あっちの岩場のほうに歩いてくの見たよ。」  こんがり兄さんがヘラで岩場の方を指して言った。 「ありがとうございます!」礼を言い、僕は駆け出す。 「彼女と仲直りしたら、焼きそば食べにきてよ!サービスするから!」  後ろでこんがり兄さんが叫ぶ声が遠くなっていった。
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