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岩場へ向かって走りながら、こんがり兄さんの言っていたことを考えていた。
花柄の水着、白い帽子。
言われてはじめて、僕は彼女がどんな格好だったか、覚えていなかったことに気がついた。
僕はさっきまで一緒にいた彼女の格好もまともに見ていなかったのだ。
息を切らせ、岩場にたどり着いた。
あたりを見回し、彼女を探す。
かがみこんで、小さな潮溜まりを見ているところを見つけた。
白い帽子、紺色に白い花柄の水着を着ている。
僕の彼女。栞がそこにいた。
彼女は、こちらをちらりと見てすぐに潮溜まりに視線を落とす。
まだ機嫌は直っていないようだ。
僕は、何と言って話しかけたらいいのか、また迷いそうになったが、それではいけないと、意を決して口を開いた。
「その水着…似合ってるね。」
「は?」
栞は、眉根を寄せてこちらを見上げた。
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