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母の言葉に父がほっとした顔をした。シュウの家は母が強いのだ。父と比べると淡い印象の見た目からは想像もつかないが。
「いいか、シュウ。飛ぶときはな、足が鍵になる。だから怪我でもしたら飛べんのや」
「そうよ?。だから、ちゃんと履物履いて外行くのよ?」
「わ、わかった」
──これ、絶対母さん草履のこと言いたかっただけやろ!
シュウはさっくり釘を刺された気がした。
(でも、それ以外の準備は出来んのよな……)
ままならない状況と過ぎてゆく時間。シュウは少しずつ焦り始めていた。
***
「行ってきまぁーす!」
「行ってらっしゃい、草履履いてくのよー!」
「分かっとる?!!」
朝霧の中。
小雨を跳ねさせて、シュウが家を飛び出していく。蓑は自分の、草履はちゃんと履いてある。ついでに笠も被ってきた。
今日も畑と田んぼの手入れをした後、早めに帰って母と勉強だ。
あれから数日経ったが、雨のせいで、飛ぶ練習は始められない。
シュウは霧に溶かすようにため息をついた。
とうもろこしの小さな房を間引いていく。傾いた苗を添え木で固定する。
雨が土を流し、少しばかり根が覗いていた。
(晴れたら土を盛り直さんとな)
そう思って三秒後。
────だからいつ晴れるんだよ!?
こう思うわけだ。
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