【浜辺の夜】

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{1} 「あーあ… めちゃめちゃ暇だなぁ。何か、面白い事でも無いかなぁ…」 友人のAが首筋をぼりぼりとかきながら、アクビ混じりに言った。 「だよなぁ…。 と、言ってもこんなド田舎…そんな面白そうな場所なんて無いし…」 俺も、Aの言葉に賛同して、ため息をついた。 俺達が住んでいる町は、 本当に何も無いド田舎だ。 こないだまで高校生だった俺達だが、いくら十代と言っても、今さら、野山を駆け巡って虫捕りなんかして喜ぶ年齢でもない。 今は、八月中旬。 まさにお盆シーズン真っ盛りで、連日、ギラギラと陽射しが降り注いでいた。 「なら…さ…」 と、もう一人の友人、Bが口を開いた。 「今夜さ。『〇〇ヶ浜』の『海の家』に忍び込んでみないか?」 「え?!あの『廃屋』か!それは面白いかもな!」 Aが身を乗り出した。 『〇〇ヶ浜』と言うのは、 町外れに有る『元・海水浴場』だ。 なぜ、頭に『元』が付くかと言うと、 かつて『〇〇ヶ浜』は、夏ともなるとたくさんの海水浴客で溢れていたのだが、 ここ最近の『温暖化による水位の上昇』だか『海水による陸地の浸食』だかで、年を重ねるごとに砂浜の部分がすっかり狭くなってしまった。 従って、とてもスイカ割りやビーチバレーができるようなスペースは、すっかり無くなってしまい、それに伴い客足もぱったりと減ってしまった。 そして、その上! 去年、その狭くなった浜で『水難事故』が起こり!『〇〇ヶ浜』は、遂には『遊泳禁止地域』になってしまったのだ。 当然、そこで一軒だけ営業していた海の家も、閉店してしまった。 今じゃ、廃屋状態の海の家がぽつんと建つだけの、本当にうらぶれた雰囲気の寂しい砂浜になってしまっていた。 Bの提案は… その廃屋状態の海の家に夜、こっそり忍び込んでみようと言うものだ。 「確かにそれは面白そうだな!よし!行ってみるか!」 俺も、Bのその案に興味が湧いて大賛成した。 「じゃあ!決まりだな!早速、今夜、行ってみようぜ!」 と、Aもノリノリ状態だ。 よく… 「お盆の間は、夜の海に行くものではない」 なんて言葉を耳にするが… 最近、暇を持て余しまくっていた俺達は、 とにかく『刺激』を求めていたんだ…。 かくして… 夜、暗くなるのを待って、 俺達三人は早速、『〇〇ヶ浜』の海の家へと向かった。
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