【浜辺の夜】

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その女の… がっくりと下げた両肩に… 長い黒髪が、べったりと貼り付いている…。 まるで! 『今、海の中から上がって来た』かの様に! な、何より! その歩き方!! 片足を引きずるかの様に… びっこを引きながら… 『ずりっ…ずりっ…』 と、足を引きずる音が、今にも聞こえて来そうだ!! うつ向いているので、 顔は、はっきりとは見えないが… 明らかに! 『この世の者』ではない!! 「わ!」 俺達は、声を上げた! しかし! 誰一人として… その場から動かない!! いや! 『動けない』のだ!! 現に俺は、必死に体を動かそうとしても… 『何かのチカラ』が働いているかの様に… ぴくりとも動かす事ができないでいる!! 女は… なおも、こちらに向かって… ゆっくりと歩いて来る…。 びっこを 引きながら…。 体を 左右に揺らしながら…。 「…あ、あぁ…。うぅ…」 俺達は… 三人が三人とも、体の自由が全く利かずに… いつしか、呻き声をあげる事しかできなくなっていた…。 そして! つ、遂に! その女は! 窓越しに 俺達の目の前まで、やって来たのだ!! そして… ゆっくりと顔を上げて… 俺達を見た! その顔!! 真っ白な肌と! 紫色に変色した唇!!! 女は… 『にたーっ』と、 笑うと… 俺達に向かって… こう… 言った………。
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