スバル海岸には魔物が棲んでいる

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 砂浜まで戻ると、 「大丈夫?」  心配そうな顔をした直純が近寄ってくる。 「うん、やっぱりいいひとだった」 「そっか」  手渡されたタオルで体を拭き、パーカーを着る。 「でも、ちょっと疲れたかも」  ずっと浮いていたこともあるけど、主にメンタルが。テンション高い人は苦手だ。 「向こう戻って休憩しようか」 「うん」  来た道を引き返す。  少し先を歩く直純の足跡が砂浜に出来る。そこに自分の足を置いてみると、だいぶサイズが違った。 「直兄、足大きいね」  振り返った直純は、沙耶の行動を確認すると微妙な笑みを浮かべ、 「まあ、男だからね」 「背も高いもんね」  しみじみと呟く。直純が再び歩き出したので、沙耶もあとを追う。 「ねぇ、直兄、今カノジョいないの?」  頭いいし、運動もできるし、背も高いし、顔もいい。普段忘れがちだが、なかなかのハイスペックなこの兄に、浮ついた話はあまりない。円の方はたくさんあるけど。 「いないよ」  隣に並ぶと、直純は苦笑した。 「そっか。いるなら悪いなと思って」  自分たちは兄弟だと思っているが、実際には血の繋がりもないし、法的にもなんの繋がりもない。ただ、霊的に困った体質である沙耶を一海家が面倒を見てくれているだけの関係だ。恋人がいるならいい気分はしないだろう。 「いないから大丈夫。いたとしても、沙耶や円のことはまた別だよ」  優しく笑う。そうやって従姉や妹的存在のことを大切にし過ぎるから恋人ができないのかもしれない。ちょっと思った。 「あ、いたー」 「どこ行ってたのー?」  競走は終わったらしい。円と慎吾が手を振っている。 「お腹空いたからなんか食べよう!」  マイペースな発言に苦笑する。 「今行く」  直純と一度顔を見合わせると、小走りで二人のところに向かった。
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