スバル海岸には魔物が棲んでいる

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「なんのはなしー?」  もう一人の友人・笹倉譲があらわれる。手にはラーメンを持っている。食事は確保してからこっちに来たらしい。隣に置いていたカバンをどかしてやる。 「海、行かない? って話」 「海、いいねー!」  テンション高く、譲は言葉を返す。二人がそんなに乗り気なら、 「俺も行こうかな」 「はい、きまりー」  慎吾が楽しそうに笑う。 「なあなあ、直純の従姉も呼んでよ」  譲が言うから、途端に渋い顔になったのが自分でもわかった。 「円? いいじゃん!」 「なんでだよ……」 「だって、俺、まだ会ったことないし」 「あれ、そうだっけ?」 「そうだよ、慎吾はちょくちょく遊んでるみたいだけど」 「まあ、声はかけてみるよ」 「なら、沙耶ちゃんも呼ぼうぜ」 「なんでだよ!」  血縁関係はないが妹として可愛がっている大道寺沙耶の名前が、何故ここで出てくるのか。 「沙耶ちゃん、元気ないんでしょ、最近」 「そうだけど……」  もともとやる気とか元気とかに溢れる子ではないが、半年付き合った恋人と別れてから前よりも大人しくはなっている。 「沙耶ちゃん、みんなで集まって海で騒ぐ! ってタイプじゃないのは知ってるけどさ。でも外に連れ出すのは悪くないと思うよ」  普段へらへらしている友人の割と真面目な言葉に、 「聞くだけ聞いてみるよ」  そう答えた。
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