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授業もすべて終え、帰ろうと教室から出たところを、
「ちょっ、沙耶沙耶!」
廊下で待っていたらしい佐野清澄に手招きされる。
人通りの少ない屋上に続く階段まで連れてかれる。
「何? 前も言ったけど、あたしと話してると変な人だと思われるよ?」
幽霊が見える巫女姫様とあだ名され、怖がられている自分の評判は良くない。見えるのは事実だけど。この前、みんなの人気者・堂本賢治と別れたこ とでより評判は地に落ちた。こちらからフったことになってるから。
でも、確かに別れを切り出したのは自分だけど、別れを望んでいたのは向こうも同じだ。
「それはそうなんだけどさ」
だからここまで来たんじゃん、と清澄は続ける。そんなことないよ、と否定はしない。彼のそういうところは嫌いじゃなかった。
もともと賢治の親友だという彼は、“見える”という沙耶の事情を知っている。別れてからは、ことあるごとに気にかけてくれている。それに感謝し ていない訳では無いが、その裏にあるのが罪滅ぼしの気持ちだとわかっているので素直に受け取れない。
彼は、二人が別れたのは自分のせいだと思っている。確かに、清澄は無茶のせいで幽霊騒動に巻き込まれ、それを助けようとして沙耶は賢治とのデー トの記憶を失った。それは事実だし、多分亀裂が明確になったのはそこからだが、それを清澄がそんなに気にする必要はない。それがなくてもいずれ別 れていた。沙耶みたいな半分バケモノのような存在が、誰かと付き合うなんてもともと無理だったのだ。
だから気にする必要はないと伝えたいし、何度か試みたが清澄は納得していないようで、やっぱり気にかけてくれている。
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