スバル海岸には魔物が棲んでいる

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「それで、笹倉くんは来ないんだ?」 「そうなんだよー。なんでアイツこのタイミングで風邪なんかひくんだろうな」 「今回も、譲は円に会えないってわけか」  大学生三人が言い合っている。円の運転する車で海に向かうところだ。  窓から差し込む日差しは既に痛くて、沙耶は内心帰りたくなっていた。  それでも、 「あ、ほら。沙耶、見えてきたよー」  円の弾んだ声に顔をあげてみれば、窓の向こうに海が広がっている。  きらきらと光る水面に、自然と気持ちはあがる。  砂浜におりてみれば、確かに人は少ない。  日差しが痛いほど暑いことには変わりはないが、それでもなんとなく心地よいような気がする。ロケーションって大切だ。  とはいえ、張り切った円に引きずられて水着を買いに行ったはいいものの、海に入る気がない沙耶は上からパーカーを羽織ったままだ。足はちょっと 入ったけど。 「よっし、それじゃあ勝負よ!」 「望むところだ!」  しばらく浅瀬で遊んでいたが、何のスイッチが入ったのか、円と慎吾は泳ぎのレースを始めるらしい。  大学生って、子供だなぁ。 「二人とも、気をつけろよ?」  直純が呆れたように声をかけ、 「チーオ」  小声で自分の式神を呼び出す。青い鳥の姿をしたソレに、 「大丈夫だと思うけど、万が一おぼれたりしたら助けといて」  すごくしょうもない命令を告げた。心なしか、チーオがちょっと困った顔をしている。 「さて、沙耶。どうする? あの二人を見ているんでもいいけど。カキ氷でも買いに行く?」  かろうじて営業している海の家を指す。  この兄は、どこまでいっても優しい。 「あの二人を見ているのはちょっと面白そうだなって思うけど」  なんか、二人して異様に速いし。二人ともハイスペックなのに、能力を本当無駄遣いしているよなぁ。 「ちょっとね、探しているものがあるの」 「探し物?」 「そう、スバル海岸の魔物」  答えると直純は変な顔をした。
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