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スバル海岸の端にある、一際大きな岩の上。その上に魔物はでる。美女の姿をしているが、話しかけられても反応してはいけない。海に飲み込まれるから。
「雑だね」
聞いた話をまとめて伝えると、直純の感想はその一言だった。
「都市伝説として流行りそうな要素を抑えてない」
「厳しいね」
二人でテクテクと問題の岩を探して歩く。
「でも、要素が足りないからこそ、本物かなっていう気がする」
「ああ、それは確かに」
端っこはそろそろこの辺だが……。
「あれかな?」
いい感じで大きな岩がある。
ちょっと砂浜から遠い。
「何か見える?」
「いいや。どうする?」
「うーん、近づくかなぁ」
あんまり乗り気じゃないけど。
「俺行くから待ってれば?」
「それは悪いし……。あと、何かあったときに、あたしじゃ直兄のフォローできないけど、直兄ならフォローしてくれるでしょう?」
祓いの能力も、とっさの判断力も直純の方が格段に上だ。
言うと、彼は心配と頼りにされて誇らしげな気持ちが入り混じったような、なんともいえぬ顔をして、
「うん、わかった」
結局一つ頷いた。
「危なくなったら連れ戻すから」
「うん」
言うとパーカーを直純に預けて海に入る。
日差しがあるから、表面の水は少し温かい。深くなると冷たい水が混じる。
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