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紺碧の海に四方を囲まれた島。30余年ぶりの帰郷。
定住人口は260人ほどしかおらず、そのほとんどが小高い草原地で暮らしている。
背の低い、石造りの草ぶき屋根の小さな家(コテージ)が点々と建ち並ぶ、まるでおとぎの国に迷い込んだような感覚は、あの頃と変わらない。
定期便のフェリーは朝2回と夕方2回。本数が増えた。
本土で働く比較的若い世代のための交通手段ではあるが、彼らは朝出かけて行っても夕方帰ってこないことが多々ある。
漁や牧羊など、昔ながらの産業で生計を立てている老齢者は、島から出ること自体ほとんどない。
時流に添う形で、近年は観光産業にも力を入れている。滞在中、私たち家族が泊まる別荘も、そうした一環から建設されたものだ。
だが、やみくもに開発すればいいというものでもない。この雄大な自然と牧歌的生活環境が破壊されてしまっては本末転倒だ。
ここはもう、このままでいい。
ここで生まれ、子ども時代をここで過ごした私は、降り立った大地を踏みしめ、あらためてそう思う。
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