帰郷

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「あの偏屈な一本足野郎め!」 ヴィクの家の喧嘩っ早い二番目の兄貴が、会合の席でそう吐き捨てたのをきっかけに、彼は“一本足”と呼ばれるようになった。 本当の名前はスライだ。 僕だけが知っている。 彼の姿を見つけたミッキーもヴィクも、あからさまに嫌そうな顔をした。 「アイツ、もう来てやがる。一本足のくせに歩くのが早い」 「僕たちから“戦利品”を横取りするつもりなんだよ。嫌な奴」 「そうされないように、さっさとすませちゃおう」 僕らは“一本足”に背を向けて、浜に打ち上げられたいろいろな物のうち、再利用できそうなものを片っ端から麻袋に放り込んでいった。 しかし、そもそも僕らと“一本足”は競合していない。 僕らが必要としているものと、“一本足”が集めているものはまったく別だ。 それなら、穏やかにいけばいいのだろうけど、いい評判を聴くことがほとんどないので、どうしても態度が硬化してしまう。 本当は嫌いってほどじゃないのに、周囲が嫌っているから自分も嫌いになる……そんな感じなのだ。 僕も表面上は嫌っているフリをしている。小さな村でうまくやっていくには、みんなに合わせる必要があるからだ。そうしないと、彼のようにつま弾きにされる。 でも本当は、僕は“一本足”のことを、スライを嫌いではなかった。
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