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「生きていたのか、本当によかった……!」
「心配をかけてすみません。寂しい思いをさせました」
「そんなこと! 戻ってきてくれただけで十分だ。お前はあの日海に流されて死んでしまったのだと思っていたのだから。これでまた昔のように一緒に暮らせる。この十年、お前はどこでどうしていたんだ?」
彬良は男のその言葉を聞くなり、笑顔をしまい込むと、俄かに視線を落とし、黙り込んだ。
「どうかしたのか?」
「すみません、お父さん。そのことなのですが……僕は戻れません」
彬良の返答に男は驚き、目を見開いた。その場に座り直すと、息子の顔をじっと見つめた。
「一体、どういう意味なんだ」
そうして、息子が語り出したのは男にとって衝撃的なことだった。
「十年前のあの日、僕は海に攫われました。それは、掟を破った戒めだったのです」
「え?」
「十年前の盂蘭盆会の日、漁に出たでしょう」
男は絶句した。彬良は続けて淡々と語った。
「お父さんはここへ来たばかりで知らなかったと思いますが、あれは、この海を統治する領主様との古からの約束だったのです。本来なら、僕はあのまま海に攫われて死ぬはずでした」
「でも、お父さんは掟を知りませんでした。それに、あの時僕だけでなく、真由さんも一緒に攫われてしまい、掟の戒めに命を奪うのは等価ではなくなってしまったのです」
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