第二章 嵐

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曇天の下、まゆが指さす先にあきらは目線を向けた。  いつもならば、穏やかな波間が広がっているはずの海が、見たこともない形に膨れ上がっていた。  雨で視界が霞んでいるから、見間違いかと思ったのだが、そうではなかった。  むくむくと盛り上がった山のような波が、こちらに近づいてくる。近づく程に徐々に波は高くなり、簡単に彼等のいる防波堤の高さを越えてしまった。  その見たこともない海の様相に、二人は恐れを感じるとともに、目を見開き、まゆは手で口を覆い、あきらはただ茫然とそれを見つめた。  飲み込まれる! その恐怖感に両足はその場所に捕らわれたまま、ピクリとも動けなかった。  まゆとあきらの叫び声も空しく、大きな高波は二人を襲った。    後日、彼らの黒と赤のランドセルが海岸下の消波ブロックの間から発見された。  海上保安官による長期間に渡る必死の捜索が行われたが、空しくも彼らは発見されず、打ち切られてしまった。 
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