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「昔とあるところに住んでいた男の人がね、道に迷ったおじいさんを家に泊めてあげたの。
そうしたらそのお礼にって、何でも欲しいものが出てくる石臼をくれたんだって。
男の人は大はしゃぎでお米や魚をいっぱい出して、近所に配っていたんだけど…それを見た意地の悪いお兄さんが石臼を盗んじゃったの。
お兄さんは石臼を抱えて船を漕いで、海の上で石臼を回して塩を出した。
右に回せば出てきて、左に回せば止まるって法則を知らなかったから、ずーっとその塩は止まらなくて、その内船も沈没して。
石臼は今も海の底で塩を出し続けているっていう話なの」
そう言われてみれば小さい頃そんな話を聞いた覚えもあるようなないような。
最も彼女のようにそれに興味を抱かなかったから、すぐさま忘れてしまったのだろう。
物覚えの良い彼女の話は何も海に限ったものじゃない。
山に行けばその山に、湖に行けばその湖に。
ただの土地ですら彼女は僕の知らない逸話を、至極楽しそうに語る。
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