海の逸話

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「それでね、私その話を聞いた時、本当にその石臼があるんだったらいつか探してみたいって思ったの。でもそんな都合の良い御伽噺ってないよね。今なら分かるもの」 そりゃそうだろう。 海水なんかに浸かっていれば石はやがて風化してボロボロになるだろう。 長い年月ずっと海流に晒されたのならきっと石臼という形も残っていないのではないだろうか。 海底に沈む岩だってその形を変えるのだから。 いくら魔法の石臼とはいえ永久不滅な訳がない。 「でも夢って大切よ?海水に塩分が含まれているのは、元々は塩酸が含まれた酸性の海水だったのが岩石のナトリウムと中和されたからとか、そんな現実よりも魔法の石臼の方が聞いていて楽しいもの」 夢のある話に飛びつくバカな人間みたいなことを言わないで欲しい。 確かに夢を追うことは楽しいのかもしれないけれど、だからといって現実から目を反らしていてはその内詐欺にでも引っ掛かりそうで心配になる。 彼女の長い黒髪が、磯の香の強いべたつく風に掬われた。 綺麗で純真な彼女は、僕とはまるで違う。  
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