暑い砂浜

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どこからか聴こえてくる音楽が『アンダー・ザ・シー』になった頃。唐突に海が揺れた。 何かでかい生物が飛び出してきた。自分の体の倍くらいの大きさのカニだ。『リトルマーメイド』のセバスチャンほどの愛嬌がないくせに何か歌ってる。そして『モアナ』に出てきたでけえカニほどじゃねえが、十分にでかい。いざ、目の前にでかいカニが出てくると、そりゃもう不気味だ。しかも何か歌ってやがる。「コーザナイデー!コーザナイデー!」と歌ってやがる。 俺は、身の危険を感じてカニから離れた。しかし、カニは追ってくる。はさみで俺のワイシャツの袖をつかみ、海にひきずりこもうとしてくる。「コーザイナイデー!コーザナイデー!」と陽気に歌いながら俺の袖をつかんでくる。その不気味さ、想像できるかよ。ああ、浦島太郎はどんな気分で亀に連れられて海の中に入っていったんだろう。いざ、人間以外の生物に海の中に誘われると、そりゃもう怖い。しかも、話が通じない。 どこからか聴こえてくる音楽はいつの間にかPUFFYの『渚にまつわるエトセトラ』になっていた。この曲を聴けばカニを食べたくなるもんだが、今目の前にいる巨大なカニからは逃げることしか考えられなかった。 俺は、カニを振り切ってひたすら走った。浜辺を走った。クソ暑い上に体力消耗だ!まったくゆるせねえ状況だぜ。しばらく走った後に振り返ると、カニは海の中に消えて行った。 走ったことで、すげえ汗かいた。ただでさえ太陽が熱いのに、大量の汗でよけいに喉が渇く。水が欲しい。
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