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「艦長、パラネシア諸島南方120カイリに到達。予定海域です。」ドアの向こうから機関長の声が聞こえる。
「よし。敵の動向はどうだ?」艦長、大戸一佐の老獪めいた声は聞く者によっては恐怖もするだろうが、落ち着きがありあまり不安を感じさせない。
「衛星より送られた映像では予定通り航行中。こちらに気づいている様子はありません。」
「そうか。今回は海賊共も大艦隊だ、締めていくぞ。おい湊。」
呼ばれた。
俺はすばやく腰を上げると、隣の指揮所の扉を開いた。
「湊一尉、入ります。」
「予定通り45分後に作戦を開始する。準備せよ。」
「了解。」
短い会話。これが好まれるのが戦場だ。
指揮所を後にし、発進準備室に向かうため、俺は甲板を歩いて艦の後方へ歩く。
戦闘速度に入ったのか艦は海面を滑るように進み、後頭部に打ち付けるような風が当たる。
蒼い空と群青の海にただなかに、不思議な淡い緑に輝く大型打撃母艦「うなさか」が走っているのが理解できる。
足元には柔らかな感触。延焼防止と燃料自給、そして保護色のために艦全体をコーティングしているコケの仲間だそうだ。
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