《小野田(おのだ) 倫》1

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《小野田(おのだ) 倫》1

【今日は始業式だったよ。あっという間に高2だね。そっちも今日が始業式だったのかな? クラス分けがあったんだけど、恵子(けいこ)と離れちゃってちょっと落ち込んでる。新しい友達作るの、けっこう気力がいるよね。なんて、道孝は学校変わったんだから、もっと大変だったよね】 【こっちも今日始業式だった。俺のところもクラス替えがあったけど、仲が良くなったやつとまた同じだった。倫なら、すぐ友達できると思うよ。あんまり身構えずに、自然に頑張れ】 4月の教室の中は、みんな浮足立っている。同じクラスになったばかりの人間同士で距離を測り合ったり、もともと仲が良かった人間同士で必要以上に固まったりして、自分の居場所を探りながらも他人をいつも以上に意識している。 「ねぇ、ごめんだけど」   始業式の昨日、新しい教室で新しい席が決まった。決まったというか、男女交互の名前順。新米や移動してきた先生たちが授業で指名しやすいからという理由で、来月までこのままだという。だから、しばらく私の席は1列目の一番後ろ。 けれども、その席に堂々と座りながら友人たちと話しているその男は、周りの騒がしさで聞こえないのか、私の方を見向きもしない。
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