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ファルコンの家は遠くなかった。海岸に戻って間もなく彼の縄張りが見えた。広い浜辺を二分するように海へ突き出た崖があって、その上まで翔んでいくと、潮風が林をさらさらと揺らしていた。ファルコンの巣はその林の中央にあるという。僕は彼と共に、木の葉の絨毯の下に潜った。
朝日の光の中にいたから、林の内部は真っ暗に感じた。目が慣れるまで待ってから周りを見回す。ここまで来るのは初めてだった。
彼の縄張りがとても広いということが、一見して分かった。頭上のイチョウがずっと奥まで広がっていて、シャンデリアで埋め尽くされているみたいに見える。静かな場所だった。他の鳥はおろか、虫の気配も感じない。地面は雨を吸い込んだような固そうな土で、掃かれた落ち葉が数ヶ所で山になっている他は、ほとんど何も落ちていない。僕の感性にとっては少し整い過ぎていて、肌寒かった。
巣そのものは、縄張り全体の広さの割に、とても小さかった。成鳥が二羽入れる程度の半球が、木の枝の上にちょこんと乗っかっている。落ち葉と枝を拾い集めれば半日もかけずに作れそうだった。
その小さな巣から、滑らかな深緑色の羽毛がにゅうっと出てきた。羽毛の端から細長い嘴が伸びている。黒い瞳と目が合った時、それは巣から飛び出してきて、僕達の前に滞空した。
僕やファルコンと同じ群で働いている、ハミングバードという雌だった。二羽が結婚しているのは知っていたけど、家庭にいる彼女を見るのは初めてだった。
「今日は休んどけって言ったのに」
ハミングバードは僕からファルコンを引き継ぎ、重そうにゆっくりと巣に入れる。中から「ドングリでもあげてくれ」という咳まじりの声が聞こえた。
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