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ハミングバードの治療は大変だった。ただ普通に一人で生きるのと、二才の子供を育てるのとでは、必要とするエネルギーが大違いなんだ。そして彼女は酷く、本当に酷く打ちひしがれていて……前者にも遠く及ばない状態だった。他の患者を診療してる時以外、僕は彼女に付きっきりだった。ベビーを預かったことさえある。そう、ベビーはベビーで大変だった。体が成長するにつれて、そのペースに心の成長が追い付いていないことが分かってきた。ハミングバードは息子への心配でもはち切れそうだった。この二人への診療には、相当長い時間が要ると見て間違いない。
正直言って幸せだった。彼女と家族同然だったんだ。幸せじゃないなんて、心底思える奴はいないよ。
ところで、僕の巣作りもそろそろ大詰めだ。木と巣の継ぎ目になる枝をようやく見つけて、接続はバッチリ安定した。飾りつけのドングリや花も、最初に思い描いていたビジョン通りにレイアウトできた。内装も完璧だ。枯れ葉を一枚も使ってない、新緑のベッドを作った。子育てに最適。外側だが、ニスやなんかは塗ってない。天然の楓の艶が一番綺麗なんだ。終わってないのは補強作業だけだ。それも、適切な楓をあとたった一本見つければいいだけ。
見つけると言えば、先ほど、迷子になったらしいベビーを見つけた。保育園の先生とはぐれたのか聞いてみたが、ああいう子だから、よく分からなかった。どうするか迷ったけど、ハミングバードのところまで送ってやるのが一番いいと思った。それで今、背中に乗せている。医師会の帰りだった。
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