書き出し

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『目が覚めたら、僕は見覚えのない部屋の中にいた。どうやら椅子に座らされているようだったが、背もたれに縛り付けられていたため、椅子から落ちることはなかったらしい』  駄目だ。こんなシチュエーション、現実にはほぼあり得ないが、映画、漫画、ましてや小説には溢れるほど出回っている。  でも、僕、糸井さわきにはこれを書く理由があった。  某小説投稿サイトで募集している『短編ホラー小説大賞』で入選するためだ。  僕が普段投稿している小説サイトとは違うサイトなのだが、「彼女」が僕の小説を見て、これに応募する事を薦めてきたからだった。  とにかく佳作を取りたい。でも、こんな「創作物」としてはありきたりな設定で賞など取れるのだろうか。そもそも気付いてもらえるのかさえも怪しい。  このまま続けるか、それとももっと斬新な設定にするべきか。  と、ここで僕の思考がシャットダウンする。  「彼女」がノックもせずに部屋に入ってきたからだった。  
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