本屋さんのトリック

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 若手の注目株と言われるとある声優は真島とはかつて養成所のライバルだった男で、真島は自分の中では彼よりも上だと思っていた、  だが現実は残酷だというべきか、才能に頼った演技しかできない真島を世間は認めなかった。  それは周囲の成功者たちとの努力の差がそのまま影響していることも大きな要因なのだが、真島は俺を認めない世間や養成所が悪いしか思っていなかった。  真島は性格が悪いのだ。  スケコマシとして腐女子達と寝たことも、彼女らから小銭を盗んだことも、そのどちらも正当な対価だと思っているほどに彼は歪んでいた。 「私は一部では魔女だなんて言われていまして……その力を使えば取ってきてあげられますよ、アナタが成り上がるためのチャンスを」 「本当に?」  真島は読子の話を懐疑的に思いながらも、本当なら養成所時代の知人達を見返せると欲を見た。  解説するのならこの時点で、すでに真島の心は魔女に飲まれていたのかもしれない。  怪しむ気持ちを上回る欲に目がくらんだ真島は読子の言葉に頷く。 「契約成立ですね」  読子の言葉に合わせて背筋にひやりとした悪寒を真島は感じた。  数分後、真島のケータイは彼を呼ぶ、  相手は養成所時代の講師である。 「真島か? 久しぶりだな」 「どうしたんですか先生」     
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