本屋さんのトリック

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本屋さんのトリック

 トリックオアトリート。  問題はトリートで解決すべきというのが人魚姫の魔女、本屋読子の教示である。  だがときにはトリックを使わざるをえない。  今回はそんなお悩みの話である。 「───というわけで、なんとかならないかな」  この日、読子を訪ねてきたのは作家仲間の芙蓉くれはという女性である。ノガミ大学の生徒ではなく、以前からの読子の知人である。  彼女の相談は悪い男を懲らしめる方法だった。 「口で言ってもどうにもならなそうね。その男は叱ったところで辞めるわけが無いし、騙されている子達も痛い目を見るまで聞かないだろうし」  今回問題になっているのは真島という男だった。  年齢は自称二十三歳、アラサーがメインなくれはらのコミュニティでは一回り若い。  くれははいわゆる同人作家で、彼女の作家仲間は同年代……アラサー女子が殆どである。  男性経験が少ない子も多いのだが、そんな中に飛び込んできたのがこの真島だった。 「仲間に入れてもらえませんか?」  最初は下手な態度でくれはらも善人だと思っていた。  彼は絵も話を考えるのも不得手だが、とにかくくれはらが描いた同人誌をベタ褒めしていた。  そして彼にはある武器がある。     
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