第1章

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 そんな祥子にだけ二次選考の連絡が入った2週間前。裏では前のめりに荒ぶり人事部に問い合わせをしていたお仲間たちから「おめでとう」のスタンプがこぞって寄せられた後、グループラインは「○○さんは退出しました」の文字で埋め尽くされたのだった。  システムエラー?人事の気まぐれ?(言われなくても分かってるよっ・怒)いずれにせよ、貴重な面接練習の機会を見逃すわけにはいかない。何せ祥子の唯一の職歴である『大島工務店』は父親の知り合い家族が経営する、こじんまりにも程があるほどこじんまりした会社で、面接らしい面接など当然ながら未体験。リクルートスーツすら持っていない祥子は、大学の入学式にと母親が謎のサイトで格安通販したレディーススーツをクローゼットから引っ張り出したばかりだった。 「次は表参道~表参道~。銀座線・半蔵門線・副都心線にお乗り換えのお客様は……」 車内アナウンスにハッと我に返ると、祥子は母親から拝借した冠婚葬祭用の黒いバッグにスマホをしまい込みドアの前に立つ。 (えっと、出口は……) ホームに降り、キョロキョロと視線を彷徨わせた祥子に、ドンッというパンチのある衝撃。 (???) 何が起きたのか、しばしアホ面を世間に晒した祥子に、 「いやぁあああああ」 という雄叫びにも似た絶叫。 目の前には空になったスタバのカップ(それもグランデより大きそう)を片手に腰をくねらせ慌てる(え?オネエってやつ?しかもこの人……) 「あ、イチマツさん」     
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