0人が本棚に入れています
本棚に追加
ばか。
私は、どうしても言ってやらないと気がすまなかった。
「ねえ、ちょっと聞いてもいい?」
「ん? なに?」
「あのさあ、なんであんたはそんなにお人好しなの?」
「へ? 俺ってお人好しかなあ。そんなつもりないんだけど」
「なに言ってるのよ。十分すぎるくらいにお人好しじゃない」
「そうかなあ。自分じゃ分からないよ、そんなこと」
「じゃあね、あんた人と歩く時、いつもどうしてる?」
「ん~そうだなあ、左側? 俺ってなんでか左側が好きだからさ」
「違うわよ。あんたはいつも、車道側に立って歩いてるの。必ず相手を車道から遠い方になるようにしてる」
「まあ、そうかな? あんまり意識したことないや」
「雨降ってる時、人とすれ違うのに傘、どうしてる?」
「そりゃあぶつからないようにするでしょ」
「あんたは必ず傘を傾けて、自分が濡れるようにしてる」
「だって傘がぶつかったら危ないじゃん。それに肩くらい濡れたからってどうってことないし」
並んで歩くと私はちっとも濡れない。
「ああ~もうっ。それとかさ、駅なんかでどうして前に人を割り込ませるの?」
「どうしてって、なかなか並べないでいるの申し訳なくってさ」
最初のコメントを投稿しよう!