ばか。

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ばか。

 私は、どうしても言ってやらないと気がすまなかった。 「ねえ、ちょっと聞いてもいい?」 「ん? なに?」 「あのさあ、なんであんたはそんなにお人好しなの?」 「へ? 俺ってお人好しかなあ。そんなつもりないんだけど」 「なに言ってるのよ。十分すぎるくらいにお人好しじゃない」 「そうかなあ。自分じゃ分からないよ、そんなこと」 「じゃあね、あんた人と歩く時、いつもどうしてる?」 「ん~そうだなあ、左側? 俺ってなんでか左側が好きだからさ」 「違うわよ。あんたはいつも、車道側に立って歩いてるの。必ず相手を車道から遠い方になるようにしてる」 「まあ、そうかな? あんまり意識したことないや」 「雨降ってる時、人とすれ違うのに傘、どうしてる?」 「そりゃあぶつからないようにするでしょ」 「あんたは必ず傘を傾けて、自分が濡れるようにしてる」 「だって傘がぶつかったら危ないじゃん。それに肩くらい濡れたからってどうってことないし」  並んで歩くと私はちっとも濡れない。 「ああ~もうっ。それとかさ、駅なんかでどうして前に人を割り込ませるの?」 「どうしてって、なかなか並べないでいるの申し訳なくってさ」     
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