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実のところ、ゼノは茸や野草に関してはあまり詳しくなかった。
元々部屋に篭りがちで必要最低限の狩りしか経験しておらず、その数少ない狩りの経験では必ずと言っていいほどイシュナードの協力があった。
言ってみれば、里の外で遊び暮らせていたのはイシュナードの助けがあってこそのことだった。
幸いにも、竜人族の身体は大半の毒を受け付けない。アルコールの類がそうであるように、それらは体内で無害な状態に分解されるため、万が一、毒のある茸や木の実を口にしてしまったとしても、何ら問題はないのだ。
味や見た目を気にしなければ適当なもので空腹を満たすことができる。なんとも便利なその身体は、今のふたりにとって、この上なく有難いものだった。
道に迷わないよう川の位置を気にかけながら、ふたりは森の中へと歩を進めていった。
紅や黄に色付いた木の葉が降り積もる森の中では、落葉に隠された獣道が無数に枝分かれしていた。静まり返ったその空間で、木の葉を踏み締める乾いた音だけが耳に届く。高みから響き渡る鳥のさえずりに耳を澄ましながら、二人は時折辺りを見回した。
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