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……こんな子が見舞いに来てくれるなんて、お前は幸せ者だ、西崎。だからさっさと目を覚ましてこの子にお礼くらい言ってやれよ。俺は心の中で西崎にそう伝えた。
「それに……右足の親指の話、塚原先輩も聞いてますよね、もう」
峯岸は声を潜め、小さな声で俺に耳打ちをする。
考えてみればこの子も西校のサッカー部の人間だ、もうその話は耳に入っているだろう。
「ああ……」
「うちのサッカー部でも凄い騒ぎになってます、浮気した女にやられただの、天誅だの呪いだの……みんな、好き勝手な事ばっかり言って騒いでます」
峯岸は露骨に不快そうな表情を浮かべ、大きく息を吐く。
まだ公にはされていない情報だが、これが明らかになれば多くの人間がこの事件に食い付くだろう。
優姫の事件のときもそうだった……マスコミは夏の神隠しだの面白おかしく騒ぎ立てるだけで、連中は誰一人として優姫を心配などしていなかった。
「あのさ……」
「はい?」
「西崎の見舞いに来た奴って、俺と君以外……」
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