第1話 あの夏の記憶

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第1話 あの夏の記憶

 この物語は俺たち兄妹と2人の幼馴染によるどうしようもなくて、救いようのない物語だ。他人から見たらそれはあまりにも狂気染みたもので、理解なんて到底出来ないだろう。  人が人を好きになる。たったそれだけの事なのに、どうして人はこんなに醜く、残忍な生き物になってしまうのだろう。    夏が終わる。  夏という季節は、俺にとっては人生を2回も狂わせたロクでもないものだ。  1度目の夏休みを思い出す。  10年前のあの夏……俺は少女と約束をした。 『ねぇ、ゆうちゃん。ボクとあんちゃんのどっちが好き?』 『なんだよ、いきなり』 『いいから! どっち?』 『だって……杏奈はまず妹だろ』 『あんちゃんだって女の子だよ。ボクとあんちゃん、どっちが好きなの?』 『……杏奈』 『……なんで?』 『あいつの方が俺に優しいし、女の子っぽい』 『あはは! そっかぁ……やっぱりあんちゃんか』 『……なんだよ、やっぱりって』 『そりゃ、あんちゃんには勝てないかー。あんちゃんはとっても良い子だもんね』 『……そんな事』
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