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第17話 友達
【7月9日 西崎の病室:塚原 祐介】
西崎の病室に入ると、大きめのベッドに1人、横たわっていた。部屋には峰岸の物だろうか、甘ったるい香水のような香りが充満している。
「……西崎」
もちろん応答はない。
だが、意外だった。横たわっている西崎は意識こそ無いが、ただ静かに眠っているだけのようにも見えた。包帯で傷のほとんどが隠れていたのでそこまで痛々しい印象は受けなかったのだろう。
だが、右足の親指は……やはり和彦の話の通り欠損しているようだった。切断面には清潔なガーゼが施されているが、根本から親指が切り取られている事は明白だ。
「……どうです? これでも多数の粉砕骨折に筋肉断裂、信じられないですよね。こんな穏やかな顔で……」
「なんか……包帯ぐるぐる巻きで現実感が無いっていうか、もっと血だるまになってるもんかと……」
「あはは……塚原先輩はなんて想像してたんですか、ちゃんと綺麗に手当くらいされてますって」
峰岸は力なく笑顔を作る。そうだ、彼女も辛いのだ。
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