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俺の言葉に峰岸が微かだが、吹き出した。僅かだが、本物の笑顔だった。俺は彼女を少しでも笑顔にできた事に喜びを感じた。中学生の女の子……つまり、妹の杏奈と同じくらいの年の子があんなに辛そうな顔をしているのは俺としても心苦しかった。
「塚原先輩、西崎先輩の事が好きなのか嫌いなのかどっちなんですか?」
峰岸が口を押えながら笑いをこらえている。
「どちらかといえば……嫌いだった。でも、嫌いだからって大怪我した友達を見捨てるほど俺も薄情じゃないさ」
「……結局は好きなんじゃないですか、友達って自称してるし」
「い、一応は同じ部活だったんだから良いだろ! それじゃ俺だけ勝手にそう思ってるみたいじゃねぇか」
「ははは……目が覚めたらちゃんと西崎先輩に聞いておきますよ~」
そこから俺は峰岸と他愛のない話を続けた。彼女は少しずつ笑うようになった。俺は少しずつ彼女の表情が柔らかいものになっていく過程を見て、少しだが喜びを感じていた。
そして、その後もかなりの長時間をかけて話し込んでしまい、気が付くと病室の窓から見える辺りはすっかり夕焼け空になっていた。
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