本の王様

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 棚に並ぶ中で逆さまに戻されているものや、隣の作者のところに入れられているものを直しながら、ふと平積みにされた本を見る。  上から3冊目がちょっと変?手に取ってみると、帯が少し破れている。ひどい。  誰だってわくわくしながら、新しい本を買うんだから、こんな風に帯がよれたり、破れたり、汚れていたら、避けられてしまうよ。中身は一緒でも。  まずい、トイレ行きたくなってきた。  私は帯が破れた文庫本を持ってレジに並んだ。  君が呼んでたのかな?  ブックカバーをかけてくれるとき、店員さんが 「代えましょうか?」 と帯の部分を見て言ってくれた。 「いえ、その本で。」  そう応えた私を、顔をあげて改めて見た気がする。敢えてその子にしたんだよ。  もう限界。小走りでトイレに向かった。  その本は、ある音楽家が書いたエッセイだった。ブログをまとめたものみたい。平積みにされるほど人気があるのかな?音楽のことはよく知らないから。  でも、君が呼んでくれてよかったよ。  ページの端っこにある、パラパラ漫画みたいに描かれたイラストも好き。  パラパラすると鳥が羽ばたく。フフ・・。  こんな素敵なイタズラができるのも、文庫本ならでは。  時々ある写真や、ラクガキみたいなイラストも素敵。     
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